RESEARCH THEME
研究内容
研究テーマ01
未解明の生命現象を分子の創発的視点で理解する
私たちは、⽣体分⼦の網羅的定量解析により、過去の知⾒や仮説にとらわれず、細胞全体を俯瞰的にとらえるデータ駆動型の研究を⾏うことで、予想外の知⾒や新たな発⾒を⽬指しています。
網羅的定量解析と⼤規模データの情報解析を起点とし、環境・エネルギー・食料問題の解決や医療への貢献が⾒込まれる未解明の⽣命現象を分⼦の創発的視点で理解しようとしています。
分岐鎖アルコールによる窒素飢餓応答とその生理的意義の解明
バイオ燃料として有用な分岐鎖アルコールを酵母で生産させる際、その細胞毒性が大きな問題となります。私たちは各種網羅的定量解析と情報解析により、分岐鎖アルコールに特異的な耐性を示す酵母株を初めて同定すると同時に、イソブタノールによる生育阻害の新たなメカニズムを発見してきました。そのメカニズムとは、培地中に窒素源が豊富に存在するにも関わらず、イソブタノールにより酵母の窒素飢餓シグナルおよびその応答が強制的に引き起こされた結果、生育阻害に至るというものです。私たち独自の知見をもとに、このような応答の詳細な分子機構や生理的意義の解明を進めています。
好気的窒素固定の解明
アンモニアは肥料、燃料、水素キャリアとして需要が増大しています。生物機能によるアンモニア生産法が確立できれば、農作物の増産やエネルギー供給など、大きな貢献が期待できます。自然界には大気中の窒素を固定する幾つかの微生物が存在し、ニトロゲナーゼ酵素がその中心的役割を果たしています。しかし、この酵素は酸素感受性であり、その有効利用は実現できていません。好気的に窒素固定を行う微生物にはニトロゲナーゼを酸素から保護する何らかの機構が存在するのではないかという発想のもと、網羅的定量解析を突破口としてその機構を明らかにしつつあります。
研究テーマ02
新規バイオ研究ツールを開発する
生物機能を改変し、新たな細胞を創成するための独自のバイオツール・戦略の開発に取り組んでいます。
ゲノム情報に基づいて細胞表層機能を自在にデザインする「細胞表層工学」技術を確立するとともに、ゲノムDNAだけでなくミトコンドリアDNAを標的とした新規核酸編集技術の確立、細胞内人工共生系の確立を進めています。
細胞表層工学の確立とその応用
酵母の細胞表層に任意の外来タンパク質・ペプチドを集積提示する「酵母細胞表層工学」を確立し、細胞表層機能を自在にデザインすることを可能にしてきました。現在では様々な研究者に利用されるようになってきています。本技術により、生体触媒の創成・資源回収・耐性強化・ハイスループットスクリーニングによるタンパク質の機能改変・受容体のリガンド探索など、広範な分野に応用することができます。例えばレアメタルを吸着回収する酵母、陸上バイオマスや藻類の構成多糖を原料としてバイオ燃料を生産する酵母などを創成しています。
ミトコンドリアDNA編集技術の確立
ミトコンドリアは細胞内のエネルギー生産や代謝において重要な役割を果たし、核とは異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を有しています。ミトコンドリアDNAに変異が生じると、ミトコンドリアの機能異常を引き起こすこともあり、ヒトでは病気の発症にもつながります。現行のゲノム編集技術は核ゲノムを標的にしたものになりますが、私たちはミトコンドリアDNAを標的とした新たなDNA編集技術の開発に取り組んでいます。
研究テーマ03
有用生物をデザイン・創成する
私たちが独自に得た生命現象に関する知見をもとに、最先端バイオテクノロジーの開発につなげる応⽤研究を⾏っています。
細胞表層工学・合成生物学・代謝工学・分子耐性工学・ゲノム編集などを駆使しながら、物質変換・ストレス耐性の向上など有用機能を付与した微生物をデザイン・創成し、広範な分野への応用を展開しています。
また、国内外の大学・企業と連携して社会実装を進め、環境・エネルギー・食料・医療などにつなげることを目指しています。
地球環境の回復と大気成分から有用物質を生産するバイオシステムの創成
地球温暖化防止に向け、海洋生態系に取り込まれた炭素(ブルーカーボン)がCO2吸収源の新しい選択肢として注目されつつあります。私たちは独自のバイオ研究ツールをもとに、海洋生態系による自然プロセス(CO2の吸収)の加速と、吸収したCO2に由来する多糖類からの有用物質生産の実現を目指して有用生物をデザイン・創成しています。また、私たち独自に得た知見をもとに、生物のもつ潜在能力を開拓して引き出すことによって、大気中の窒素を有用含窒素化合物に変換するバイオシステムの創成に取り組んでいます。
ストレス耐性強化によるバイオものづくりの拡大
生物機能を利用した有用物質生産(バイオものづくり)は、化石燃料をベースとした生産法と比べて環境負荷が少なく、クリーンエネルギーをベースとした産業・社会構造への転換や資源循環型経済の形成に向けて大きな貢献が期待されています。私たちはバイオものづくりの際に生じる各種ストレス負荷に着目し、複数遺伝子の包括的転写制御を通じて酵母のストレス耐性を強化する「分子耐性工学」を開拓してきました。ストレス耐性を強化した微生物のデザイン・創成による生産性の向上という戦略を新たに提唱・推進しています。
有用な微生物機能の探索・解析・応用
微生物は非常に多様であり、様々なユニークな機能を持っています。微生物の有用な機能は、産業的にも利用されており、例えば、高い選択性を持つ微生物酵素の医薬品原料生産への応用や、化学プロセスを代替する環境負荷の低いバイオプロセスの構築が挙げられます。微生物のユニークな機能を探索により見つけ出し、解析することでその化学的なメカニズムを解き明かし、さらには産業への応用を目指します。
募集
募集
当研究室では分子生物学、応用生物化学、応用微生物学、遺伝子工学、合成生物学などの分野において、以下の3つの内容を柱として研究を行っています。
- ①未解明の生命現象を分子の創発的視点で理解する
- ②新規バイオツールを開発する
- ③有用生物をデザイン・創成する
様々な生命現象への興味・好奇心を大事にし、ワクワク、ドキドキ感をもちながら大胆なチャレンジを行い、夢を語りながら研究を進めていきます。皆さんに秘めた無限の可能性を引き出し、努力する学生、チャレンジをする学生をサポートします。自ら考え、行動・発信でき、広い視野で仲間と協力しながら進めていける人材育成を目指しています。開設して間もない研究室ですが、最新設備を整え充実した研究環境を整備しています。また、教職員・学生の立場を問わず、自由闊達に意見交換ができる和気あいあいとした雰囲気を大切にしています。切磋琢磨しあえる仲間とともに地球規模の課題解決・バイオサイエンスの発展に向けて当研究室に参加してみませんか?
学部生、大学院生(修士・博士)、ポスドク研究員、留学生など幅広く人材を受け入れています。研究室見学については随時受け付けますので、当研究室に興味を持たれた方は下記までご連絡ください。
ご連絡先:黒田浩一(kuroda[at]kit.ac.jp)
寄附・共同研究
ご寄附のお願い
当研究室では、様々な生命現象を解明し、独自の知見と手法をもとに一歩先を見据えた革新的バイオテクノロジーの開拓を進めています。また、国内外の大学・企業と連携して社会実装を進め、環境・エネルギー・食料・医療など地球規模の課題解決につなげることを目指しています。このような世界的視野に立ち、基礎研究だけでなく社会への貢献を実現していくためには、研究環境の整備・消耗品購入・人材育成などに多くの資金を用意する必要があります。私たちの研究ビジョンにご賛同いただける場合は、奨学寄附金として皆様からの温かいご支援をお待ちしております。
本学の奨学寄附金制度の詳細につきましては、下記ウェブサイトをご覧ください。
https://research.web.kit.ac.jp/external_fund/donation/
ご連絡先:黒田浩一(kuroda[at]kit.ac.jp)
共同研究のお願い
当研究室では、基礎研究にとどまらず、「バイオものづくり」を代表とする様々な革新的バイオテクノロジーの社会実装を目指しています。私たちの技術・アイデア・ノウハウをもとに、より良い社会の実現を産学連携によって一緒に進めていただける企業様を広く募集しております。
本学の共同研究制度の詳細につきましては、下記ウェブサイトをご覧ください。
https://www.liaison.kit.ac.jp/liaison/sangaku/intro/
ご連絡先:黒田浩一(kuroda[at]kit.ac.jp)